昨今、日本のアイスホッケー競技人口は恒常的に右肩下がり。多くのスケートリンクが閉鎖に追いやられつつある中で、そんな現状を変えるために立ち上げられた大会。それが釧路ビアリーグだ。以前の記事でも紹介した釧路ビアリーグに、TICスタッフである私、小林泰がゲスト参加させていただいたので、体験レポートをお届けします。
※以前の記事もぜひお読みください
今回、東北海道スポーツコミッションへの中継機材導入のために釧路へ行きました。4~7月頭までの釧路ビアリーグ最後の週末プレーオフで中継練習をするということに。そこで、せっかくならばと、釧路ビアリーグ体験をさせていただきました。
いつもお世話になっている釧路ビアリーグ主催者、中島さんの出身高校である釧路江南高校OBで集まって結成した江南OBに絶賛「足引っ張り役」として文字通り、お邪魔しました。
江南OBは三つあるディビジョンの中で一番上のDiv.1
そのまま行ってぽいぽいと出るのかなぁ〜と思っていたのですが、選手登録をしましょうということで。登録しました。
すごくちゃんとした申し込みサイトでびっくり。参加登録後ちゃんとメールも届きます。そして、釧路ビアリーグのスタッツページをみると・・・・・
ちゃんと、個人スタッツが!!TICのサイトでもぼちぼちやっていますが、どうにも写真集めが手詰まりなので、こうやって登録段階でまとめるのはとてもいいなと。釧路ビアリーグを主催しているプロフォーマンスは大会運営者なのでそこはスムーズです。
さて、スタッツですが、もちろん一覧表もでます。
やっぱり、こういうの大事ですよね。スタッツページがあって、しっかりまとめられている。学生でこそスタッツをまとめたデータベースが必要なのではないかという考えもあります。欧米のホッケー強国はジュニア世代からシニアまでありとあらゆる大会のスタッツが管理されていてデータベース化されています。スカウトはそれを見て選ぶので、ぽっと出の日本人がトライアウトだけ受けに行っても、スタッツでの評価軸が日本の場合欠落しているのでスカウトがわざわざ日本人をとるわけがない。らしいです。英語もできないし。
さて、事前準備はこれだけです。あとは防具着て乗るだけ。
写真ももちろん、全試合撮ってあります。釧路ビアリーグのFacebookページで共有されています。これも結構大事です。やっぱりみんな自分のプレー写真が欲しいですよね。
釧路ビアリーグは音響もしっかりしています。会場設備だけでなく、予算でアンプを買って音響設備を整えています。
アンプは二台
ミキサー
曲の切り替えはパソコンのアプリケーションでやっています。ショートカットキーの設定ができるやつですね。東伏見の音響はDVDに焼いてあるやつを担当校の人が早送りボタンでカチカチ押してやっているのですが、なるほどこの形のほうが操作性もよさそうです。
勝った時の表彰というのは人間なんだかんだあったら嬉しいわけです。釧路ビアリーグの象徴とも言えるのが、カップ。カップです。NHLと言えばスタンレーカップ。釧路ビアリーグと言えば?サンセットカップです。
ビアリーグだけに20Lビール缶を溶接して作った手作り。でもやっぱりこれを掲げられると嬉しいですよね。これも持たせてもらいました。
案外軽い。中身は空洞だからでしょうか。
カップを掲げられるのもそうですが、優勝チームにはプロフォーマンスが製作した記念キャップが贈呈されます。これもスタンレーカップと一緒ですね。優勝記念キャップを被ってカップを掲げる。なんだかNHL選手になったみたいな感じです。
もちろんそれだけでなく、協賛企業からいろんな商品がもらえるらしいです。オフィシャルスポンサーの釧路トヨタからは商品券が今年は贈呈されました。
もう一つ、気になったのは、スタッフがみんなインカムをつけていて無線でつながっているということです。レフェリーもです。ジャッジをしながら、スコア情報を共有したり、ジャッジングの方向性を修正したり。中島さん曰く、「アジアリーグでもやってない」ことだそうです。レフェリーインカム、ありですね!レフェリー同士での注意喚起もできるのでミスジャッジが減るということでした。
インカムをつけた中島さん
ルール作りがコミュニティ作りの基本
釧路ビアリーグを特徴づけるのは、形にできる賞や仕掛けもありますが、もっと大事なのは、「楽しくホッケーをやる」ひとたちによるコミュニティを維持できるようなルール、無形の仕組みと運営にあります。
1番大事なのはノーボディチェックルール。ビアリーグではボディチェックをしたら反則。ペナルティも、ペナルティキルになるのではなく、ペナルティショットをやって、入ったらペナルティキルはなし。入らなかったらそこから2分間ペナルティキルというルールです。無茶苦茶にあたり散らすような人は絶対いません。15分流しを3ピリオドという枠なので、ペナルティをすればするだけペナルティショットに時間をとられてしまうのでペナルティをしないように気をつけることになります。
3点ルールというのも重要です。A~C以上でランク付けされた経験者が入れる得点は3点差以上がついた場合カウントされず、ノーゴールになります。これであまりに大差がついてしまう試合になることを防ぎます。また、経験者以外の選手が楽しむという目的にもかなり合致したルールです。
中島さんは釧路ビアリーグを作ろうと決めたとき、まず最初に時間をじっくりかけて作ったのがルール、規約だそうです。みんなが楽しいと思える場所を作るには、そんな雰囲気を守れるコミュニティでなければならない。それをしっかり維持するにはしっかりとしたルールが必要だとのこと。
また、15分流しでピリオド間は1分。2ndピリオドでのサイド交換もありません。楽しんでホッケーをするという方針に必要のないことはバッサリ切って単純化しています。時間を食ってしまうのはもったいないということで、試合前の整列と礼もありません。そのかわり、試合後はスタンレーカップの各シリーズ最終戦のように並んで両チーム握手していきます。こうすれば、仮になにかラフなプレーがあってもその場で流せる。遺恨が残りません。この握手の時間は、カットしていいものではなく、むしろ必要不可欠だとのこと。学生リーグでもかなり荒れることはありますが、離れた位置から野次って険悪に終わるよりも、確かにこのほうが円満でいいかもしれませんね。
神は細部に宿る
実際に釧路ビアリーグに参加していただいて思ったのは、細部までの配慮がとても行き届いているということでした。作りたい場のために必要なことは抜かりなく取り入れ、逆にいらないものは容赦なく切る。
そして、しっかりと練り上げた釧路ビアリーグを安売りしないことも考えの一つ。最大11試合で手続き込みでの1万5000円という値段設定は当初、高すぎるという声もあったそうです。でもそれらは、しっかりとしたスタッツ、商品とアワード、音響など(来年からは中継も加わります)、ホッケーを楽しめる最高の場を提供するために必要な経費を計算したときに最低限の金額だそうです。
オフィシャルなどの運営スタッフにもしっかり時給で1500円というお金を支払っているそうです。これは、運営を安定してするために必要なことですね。スタッフのみなさんもお仕事がある傍で運営をしています。ボランティアだったら続かないでしょう。当番校でまわしてやるという考えもありますが、その場合は運営のクオリティが下がってしまいます。ホッケーを全力で楽しめる場所を作るために、この出費は必要不可欠です。
最後に
ゲスト参加ということでしたが、とても楽しかったです、中島さん、江南OBチームのみなさん、ビアリーグのみなさん、ありがとうございました!
負けてしまったけれどカップと写真
小林つながり・・・ではないですが、クレインズの元選手小林弘明さんとツーショット撮っていただきました。
最後に握手いただいて「がんばってくれ」とお言葉いただきました。いろんな大人の事情がある昨今ですが、永遠の17歳を自負している大人3年目の22歳として、「正しく」、「善く」、「ロジカルに」、ホッケーのために頑張っていきたいと思います。