データで振り返る五輪予選

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歓喜、安堵、期待、そして、達成感。

その瞬間、情感の地平から波濤のように押し寄せる感情のそれがいずれだったか。

傍観者たる我々には毫釐も分からないのはもちろん、当事者たる選手、スタッフにしたところで分からないものに違いない。いや、「人による」と言った方が正しいだろうか?

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少なくとも、ブザーが鳴った瞬間のGK藤本はこの上なく安堵しているような、そんな仕草だった。

 

2/9~12の日程で北海道苫小牧市で行われた平昌五輪最終予選を全勝首位で通過したことにより女子アイスホッケー日本代表(通称スマイルジャパン)は来年韓国で行われる平昌五輪への切符を手にした。五輪への参加は主催国枠で参加した長野五輪を入れると前回のソチ五輪を入れて3回目。自力出場は前回大会以来2大会連続となる。

世界ランキング7位の日本は同8位ドイツ、11位オーストリア、12位フランスを破った。ソチ五輪ではドイツとは惜しい試合運びをしながらも惜敗したこともありその雪辱を果たす形になった。この記事では最終予選の足跡をIIHF発表およびTIC集計でのデータをもとに解析することを試みてみたい。

優勝を争ったドイツと日本

ほぼ全てのスタティスティックスが上位の日本&ドイツとオーストリア&フランスに二分される形になった。

まずは得点に関係するSOG(シュート数)から

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※GP=試合数、GF=得点数、SSG=防がれたシュート、SOG=シュート数、SG%=得点率(得点/シュート本数)

日本とドイツはシュート数は100本程度とほぼ互角。一方のオーストリア、フランスは60本台。ドイツと日本の雌雄を分けたのは得点率か。シュートを実際に得点に繋げる確率が日本の11.50%に比べてドイツは7.62と明らかに少ない。なぜか?

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※ADV=PowerPlay回数、PPGF=PowerPlay得点数、PP%=PP得点数、TPP=PowerPlay合計時間、M:S=平均時間

パワープレーの成功率にヒントがある。日本は36.36%に対してドイツが23.53%と大きく水を開けている。ドイツのパワープレー回数の方が日本の1.5倍程度あるのにパワープレー得点は4点。パワープレーで稼いだシュート本数をドイツは得点まで繋げることができなかったと考察できる。

一番の差はGKの差

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※GA=失点数、SVS=セーブ数、SOG=被シュート数、SVS%=セーブ率、GAA=60分あたりの平均失点数、PPGA=パワープレー失点数、ENG=エンプティーゴール

やはり、光るのが日本のGK藤本の好守。圧巻のセーブ率95%だ。失点3もそのうち2点は相手のパワープレーによる失点、そして唯一の5対5での失点は初戦のオーストリア戦第1ピリオド、まだチームの調子が上がっていない時での失点だった。

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一方、PKに関しては改善の余地があると言える

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※DVG=PK回数、PPGA=PKでの失点数、PK%=PK成功率、TSH=数的不利合計時間

ドイツが成功率、90%なのに対して日本は80%だ。

チャンスを作り出したフェイスオフ成功率

IIHFではフェイスオフ勝率ランキングは出しているが、各試合フェイスオフ勝率をわかりやすくは出していない。

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※FO+=フェイスオフ勝利数、FO-=フェイスオフ負け数、FO+/-=差し引き、FO%=フェイスオフ勝率。

ここで光るのが日本選手二人だ。2ndラインの床、1stラインの米山のフェイスオフ勝率はかなり高い。ちなみに、手元のデータだと日本のフェイスオフ各試合での合計勝率はこうだ。

vsオーストリア 45:29  61%
vsフランス 35:22  61%
vsドイツ 24:14  63%

いずれも60%周辺とかなり高いフェイスオフ確率になっている。このフェイスオフが最期に実を結んだのがドイツ戦の3点目、床が引いたフェイスオフを久保がワンタイマーで沈めてドイツを引き離した得点だ。この得点に関しては、床が2ndラインで久保が3rdラインということにも注目したい。まさに監督の采配である。

さて、一方ドイツはどうか?

vsフランス 44:24  64%
vsオーストリア 33:21  61%
vs日本 14:24  36%

フェイスオフはこんなにも大事なのだ。

守りきった日本

山中監督のもとで守備戦術を磨いてきたスマイルジャパン。それは+/-に現れている。

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プラスとは得点の際に氷上にいること、逆にマイナスとは失点の際に氷上にいることでそれぞれ加算される。プラスマイナスの差し引きが+/-である。例えば、いくら得点を重ねるディフェンスだとしてもマイナスがついていて結果的に差し引きマイナスならばその選手はチームの足を引っ張っていることになる。そしてなんと、上位13人のうち11人が日本チームである。ドイツは一人もいない。

チームディフェンスはプラスマイナスにあらわれる。まさに山中式守備の面目躍如と言ったところか。

得点ランキング1位の久保がプラスマイナスでも1位である。マイナスは1のみ。

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平昌へ

平昌五輪の相手はこれで出揃った。まずは下位グループを勝ちあがらねばならない。オリンピック初の勝利へ。焦点はやはり、スイスと韓国だろう。スイスには2016年は6戦3勝3敗。ほぼ五分だが、最後の3回は勝利している。このまましっかりと実力をつければ勝てない相手ではない。主催国の韓国も侮れない。特に、開催国であるから、日本としては今回課題として上がったペナルティーキルをしっかりと修正する必要があるだろう。

あと1年。平昌で咲く笑顔を私たちは心待ちせずにはいられない。

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小林 泰

小林 泰

東京大学運動会スケート部アイスホッケー部門2015年度副将 公益財団法人日本アイスホッケー連盟国際委員 カナダに住んでいたがアイスホッケーを始めたのは大学から。会社を始めたばかりなのでお金、ありません。。。。
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