氷都くしろを盛り上げる!釧路フリーペーパーMemberの挑戦

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北海道の東、釧路湿原に抱かれるように人口18万の街、釧路はある。
日本の多くの地方都市の例に漏れず、釧路も少子高齢化と過疎化の大波に呑まれつつある。

じりじりと減りゆく人口、先細りしていく街の活気。日本全体を過去30年苦しめてきた暗雲は、「氷都」釧路にも重くのしかかっている。今では、国内4チームのみになってしまったアイスホッケートップリーグの一角である日本製紙クレインズを抱え、過去日本代表に連なる多くのアイスホッケー選手を排出してきた釧路。しかし、単に子供が減るのみならず、小学生の競技人口がサッカーなどに奪われてしまうようになってきてしまった。ついに、数年前には日本製紙が十条スケートセンターを閉鎖させるなど、氷都釧路のアイスホッケー界にとって実際的な問題を突き詰めるまでに事態は深刻化するまでにいたっている。

そんな中、釧路を盛り上げようと2014年12月に創刊されたのが、氷都くしろを盛り上げるフリーペーパーMemberだ。小中学校などでの配布を通じて、18万の人口の釧路で年4回、それぞれ3万4000部を発行しているこのフリーペーパーは昨年、2015年度日本フリーペーパー大賞において多くの票を集め、コミュニティ部門での優秀賞を受賞した。釧路信用金庫からは、地域へのその貢献を認められて地域貢献奨励賞を受賞している。

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立ち上げメンバーの一人である大和田礼さんによると、このフリーペーパー構想が動き出したのは、ちょっとしたお茶の席でだったという。同じく立ち上げメンバーである小笠原健容さん、馬場智宏さん、信太崇宏さんなどと話をしていたときに、このアイディアの種は芽吹く機会を与えられた。

「最近、釧路も、アイスホッケーも、元気ないよね。なんとかしたいね」

「そうだ、フリーペーパーなんて作ったら面白いんじゃないか?」

そもそも、最近はアイスホッケーに触れることさえ少なくなってしまった。ならば、アイスホッケーに関する釧路の情報誌を作れば競技人口は増えるのではないかという発想からMemberは始動した。

当初は秋の日本製紙クレインズの開幕戦に合わせて創刊するという目標だったそうだが、さすがに1ヶ月で脱稿から印刷、配布までまわるのは難しく、12月の創刊になった。

創刊から1年半、今では3万4000部という釧路管内の人口と比較すればかなり多くの人に届くまでになっている。スポーツで頑張る小中高生を重点的に取り上げているMemberに載るのが今では子供たちのひそかな目標になっているくらいだ。

読者アンケートでの豪華景品も特徴の一つ。広告協賛企業の提供で、バッグや靴、ホッケースティックなどのアンケート抽選景品が毎号3~4点ついている。応募者も50人を超えることはあまりないそうなので、狙い目だ。応募してみるのもいいだろう。

当初は、アイスホッケーに絞った取材をしていたが、読者アンケートからの意見も汲んで、メインはアイスホッケーを据えてはいるものの、いろいろなスポーツの取材をしている。創刊3号目の2015年6月には、ウィンタースポーツと、夏季スポーツを加えて16ページ増の48ページで「Member+Over」として両面表紙で発行した。

この日は、高校野球の試合を取材するということで同行させていただいた。

大和田さんは、取材して、記事を書くのももちろんだが、教育委員会にお願いして学校配布してもらえるようしたり、地道な活動をしている。

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カメラマンを主につとめる信太 崇宏さん。同じく印刷会社に勤める信太さんと、馬場さんは印刷まわりの役割を受け持っている。信太さんが関わる釧路の街おこし活動はMemberの作成・編集のみにとどまらない。

実は釧路は市内に90を超えるラーメン店が店を構える「ラーメンタウン」。ラーメンタウン釧路を盛り上げるべく活動する釧路ラーメン麺遊会の現在の会長が信太さんだ。

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釧路ラーメン麺遊会は毎年、8月に開催される釧路ラーメンフェスティバル「ら・フェスタ」の運営をしている。「ら・フェスタ」はなんと動員数8万人という数を誇る、北海道最大級のラーメンイベントだ。釧路ラーメン麺遊会は、他にも小学校への食育講座や、選挙連動でのキャンペーンなども行っている。

それだけでなく、信太さんは釧路ラーメン麺遊会では、釧路中心部にあった空き店舗を使ったラーメンパーク、釧路ラーメン元気横丁を作った立役者だ。釧路の町おこしにかける思い、おもしろいことをやる実行力は並ではない。

大和田さんは釧路ラーメン麺遊会の副幹事だ。麺遊会での活動がきっかけで、地域の子供たちのためにやるという趣旨に賛同して活動に参加している。

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フリーペーパーを発刊すれば子供たちのモチベーション向上にいいのではないかというアイディアを最初に出したのは馬場智宏さん。馬場さんはユースの日本代表として昔、日の丸を背負っていた経歴を持つ。昔、ホッケー情報誌に自分の活躍が載って嬉しかったことからアイディアが出てきたという。当時はゴーリーをやっていたが、今はプレイヤーとして釧路ビアリーグに参加している。

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そんな市民有志でつくるMember製作実行委員会の委員長を務め、最近設立されたNPO法人東北海道スポーツコミッションの専務理事を兼任するのが小笠原健容さんだ。

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スポーツは感動を与えてくれる。そんな感動を伝えて釧路を盛り上げたい。子供達が釧路に誇りを持てるようにしていきたい。そう語った小笠原さん。釧路の明るい未来への変曲点は、もうそこにあるのかもしれない。そう思わせられる取材だった。

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小林 泰

小林 泰

東京大学運動会スケート部アイスホッケー部門2015年度副将 公益財団法人日本アイスホッケー連盟国際委員 カナダに住んでいたがアイスホッケーを始めたのは大学から。会社を始めたばかりなのでお金、ありません。。。。
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