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日本代表DF蓑島圭悟が挑んだ五輪最終予選。日本のアイスホッケーはもっと強くなる

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アイスホッケーファンの夢は、またしても絶たれた。 

アイスホッケー男子の平昌(ピョンチャン)冬季五輪最終予選がラトビア・リガで9月1日から4日にかけて開催され、日本代表はドイツ、ラトビア、オーストリアに3戦全敗し、五輪出場を逃した。この結果、自力での五輪出場は38年遠ざかることになった。

今回大学リーグからはただ一人、中央大学2年のDF蓑島圭悟選手が五輪最終予選に挑んだ。日本代表として世界で戦い、何を感じ、何を思ったのか。リアルな思いを聞いた。(9月11日取材)

氷上だと全く勝てないのが現状

——五輪最終予選を終え、率直な感想はいかがですか

蓑島:まだ世界と差がある、という感じです。最初のドイツ戦も数字だけ見れば0—5でしたが、それ以上に差があった気がします。0—10でもおかしくなかったんじゃないかと。GK福藤さんにかなり救われたと思います。
日本人の武器はスピードやクイックネスと言われていますが、そこも世界のレベルでは同じくらいか、通用しないレベルで、他の部分では全部負けています。すべてにおける差が結果として出てしまったと思います。

——正直に、今の日本代表に足りないところは何だと思いますか

蓑島:センスというか、頭の良さというか。言ってしまえば全部なのですが、プレーの頭の良さとか、基本的な体力ですね。日本人は体力があると言われていますが、それは陸上の上であって、氷上だと全く勝てないのが現状です。

——練習の質を本番の舞台でぶつけることができたと思いますか

蓑島:勝負強さですよね。海外のプレーヤーは本番に強いとは思います。日本人は練習ではできても試合ではできない。そういったことが多かったと思います。

——8月14日に合宿先であるドイツに出発されましたが、合宿ではどんなことを確認されたのですか

蓑島:最初は1対1や2対2など対人プレーの確認をして、試合が近くなってきたらブレイクアウトとか、PPプレーの確認を行いました。

DF陣は王子イーグルスのキャプテン芳賀さんや山下さんが中心でした。芳賀さんとPPを組みましたが、こうしたほうがいいよと言いたいことは言ってくれて、僕も言いたいことはしっかり伝えられました。プレーしやすかったですね。

——芳賀選手から何かアドバイスなどもらいましたか

蓑島:PPになるとDFはどうしてもパスコースを1つしか探せなくなるので、芳賀さんからは「一回俺に出していいよ」と言われました。僕がキーマン側だったのですが、芳賀さんに一度パスを出して、そこから展開しようという話をしました。

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蓑島選手のロッカールーム

9月1日 ●日本 0 (0-2、0-3、0-0) 5 ドイツ○

9月2日 ●日本 1 (0-0、0-1、1-2) 3 ラトビア○

9月4日 ●日本 0 (0-1、0-0、0-2) 3 オーストリア○

——ドイツ、ラトビア、オーストリアと3試合戦いましたが、特に印象に残っている試合は

蓑島:ラトビア戦ですね。ラトビア戦は0—0のまま試合が進んでいって、アンラッキーな形で先制点を許してしまったのですが、自分も含めて選手全員がしっかりマークをしていれば防げた失点だったので、そこから流れが変わってしまったのが悔しかったです。最後の6人攻撃も自分が滞氷していて失敗してしまい、2失点に絡み悔しさが残った試合なので印象に残っています。

——初戦のドイツ戦、最後のオーストリア戦は振り返っていかがですか

蓑島:ドイツはNHL選手が9人いて、うち1人は僕の1歳年上でNHLドラフトで上の方にいた選手だったので意識していましたが、やっぱりレベルが違いました。シュートブロックをした時にレガースが壊れて、その下のアンダーとロングソックスも焼け焦げて切り傷になってて。ああ、やっぱりすごいなと思いました。

アジアリーグの試合だったらまだ守っている時に体を押さえてパックを取ったりできますが、NHL選手になるとパックすら触れなかったです。それで試合中ずっと悔しいと思ってプレーしていました。

オーストリア戦は両チームともチャンスが同じくらいありました。今まで以上にチャンスがあったのに決められず、同じくらいのチャンスの中でオーストリアが決めてきて、決定力の差があると感じました。

キーとなるのはカウンター攻撃

——厳しい戦いの中でも“ここは通用するのではないか”と思ったところはありましたか

蓑島:ドイツに関してはこれからもずっと厳しい戦いになると思うのですが、ラトビア、オーストリアなら何とか勝負できると感じます。ラトビアの時はずっと守って守ってカウンターで攻めるというスタイルでした。そうですね、日本が勝つためにキーとなるのはカウンター攻撃だと思います。

カウンター攻撃は7月の国内の選考合宿からずっと練習していて、監督はハイブリットアイシングをずっと使えと言っていました。大会中も結構成功はしていたのですが、ハイブリットアイシングをしてもパックを取った選手が潰されてしまい、そこからつながらないのがもったいないと思いました。

——監督から個人的に掛けられた言葉はありましたか

蓑島:(代表でプレーすることに)全然問題はないと言われました。PPでも使ってもらい、プレーの柔らかさなどホッケーセンスに関しては褒められましたが、疲れた時に判断ミスがたまにあるので、そこは改善して欲しいと言われました。自分の中だけの判断で周りは追い付いていない、攻め急いでしまうことがあって、そこを指摘されました。今まで培ってきた判断力とかセンスは自信を持っているので、あとは体をつくらないといけないですね。

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プライベートでも仲の良い蓑島選手(左)と三浦選手(右)

——代表の中で、同年代の三浦優希選手の存在は

蓑島:優希がいてくれて本当に良かったです。最初にメンバーを見たときは、一番歳が近い先輩で3つ上とかだったのですが、直前で寺尾さんの代わりに優希が招集されました。ホテルもずっと同じ部屋だったので精神的にも楽でした。部屋の中でも楽しかったですね。ずっとお笑いとかを見ていました。たぶんツボが合うんだと思います。あと優希のお父さんは五輪選手だったので、その話も聞けて面白かったです。

優希には頑張って欲しいです。自分は日本で圧倒的な結果を残して、優希はUSHLで活躍して欲しいなと思います。この間東大和で練習があったんですけど、優希の家が東大和のリンクの裏のマンションなので、「ここどこだ?」みたいな感じで写真を撮って送ったり。そんな感じで結構ふざけたりしています。

——海外遠征でストレスはなかったですか

蓑島:そうですね。食事も日本食よりは洋食のほうが好きなので、あまり苦労はしなかったですね。(体調面は)行きは時差ボケ対策のために飛行機で寝る時間を調整したりしました。それでも昨日もあまり眠れなくて、まだ引きずっている感じです。

——6月にはUSHLのトライアウトを受け、9月には五輪最終予選に臨み、海外でプレーされる機会が多かったと思いますが、海外でプレーする経験は選手として必要だと思われますか

蓑島:もちろん、そう思います。海外に行ってみるだけでも全然違いますね。今年は色々挑戦する年です。次は来年2月にアジア大会があるのでそこで代表に選ばれたいです。監督が大学のリーグ戦を見ることはほとんどないと思いますが、監督の耳に(自分が)いい感じで仕上げてきているという情報が入るように、そのためにも頑張ります。

大学リーグから日本のアイスホッケーを強くする

——帰国し早々リーグ戦を迎えたわけですが、大学リーグに関して何か感じることはありますか

蓑島:フォーマットというか、大会形式は変えたほうがいいなとはずっと思っています。例えば上のリーグは6チームでやって、リーグ戦は2回総当たりではなくレギュラーシーズンをつくって、それを終えたらプレーオフにする。昔はやっていたそうですが、そういうふうにやったほうがいいのではないかと思います。

——同世代には今後日本のホッケー界を担っていく選手が揃っていると感じます

蓑島:僕もそう思います。大学2年の代はメンツも揃っていますし、非常に重要な代かなと思います。

——2022年北京五輪まで6年あります。どういう改革をすれば日本は五輪に出場できると思いますか

蓑島:色んな難しい所もありますが、日本はロシアや韓国などともっと試合をするべきだと思います。大学生もどんどんできたらいいなと思います。ヨーロッパは近い範囲でホッケーの強い国があるので、その国に行って練習試合などを組めるのですが。大学リーグも色々なところを変えていく必要があると思います。あと大学リーグは観客が少ないので、何かできればいいのですが。

——おっしゃる通りだと思います。五輪最終予選の時は観客数はいかがでしたか

蓑島:席が全部埋まって、立ち見や階段に座って試合を観るお客さんがいるくらいでした。リンクは4階席くらいまであったのですが、最後に行われたラトビアとドイツの試合を観た時は、自分は優希と4階の立ち見で観ました。あれは燃えますね。ああいう所でホッケーをやりたいですね。

大学リーグが充実すれば、日本のホッケーのレベルもすごい上がっていくと思うんですよね。すごい上手い選手だったのに大学を卒業したらホッケーを辞めてしまう先輩も今まで何人もいて。本当にもったいないと思います。その辺が変われば、日本のホッケーは強くなると思います。

——大学全チームの中で個人的に注目している選手はいますか

蓑島:FWは明治大学の松本昂大ですね。松本は高校が清水で、僕は白樺で、勝ってはいたんですがスキルのある選手ですね。あいつは上手いです。みんなテクニックに注目しますが、一番は判断力がずば抜けていいと思います。ここはかわしていこうとか、ここはかわさないで味方にパスを出そうとか、そういう判断力ですね。

DFは…分からないです。DFは自分が一番ではないといけないという思いがあります。でもハリデー慈英(早稲田大学)には負けたくないですね。向こうもそう思っていますから。あいつの存在は大きいです。仲はいいのですがお互い感情を表に出さないので。DFだから試合中に当たることもないですし、でも心の中では負けたくないという思いはあります。向こうからもそれは伝わってきます。GKは総じてレベルが高いと思います。

——今年の上半期は様々なことに果敢に挑戦されたと思いますが、ご自身の中で意識が変わったことはありますか

蓑島:今回のリーグ戦は余力を残さないでやろうと決めています。どこで誰がみているか分からないですし、その時に全力でやっていなかったら後悔するので。全試合余力を残さず戦いたいと思います。

短期的な目標は、今まで大学リーグでいなかったDFになることです。守れるし攻めることもできるしパスも出せる。芳賀さんも大学時代に活躍していましたが、自分は芳賀さんを超えたい。今までの大学リーグの選手の中で一番のDFになりたいです。

長期的な目標は、優希とも話しましたが、五輪に出場すること。今20歳なので、あと3、4回。

——日本代表と個のレベル向上。今の蓑島選手にとって優先すべきはどちらだと思いますか

蓑島:個ですね。個人が強くならないと。みんなでやろうとしても個の力がないとできないですし、個の力ですかね。自分の長所をもっと伸ばしたいです。

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蓑島選手、ありがとうございました。

「今が最後。これが自分にとって最後の試合になると思って毎試合臨んでいます」

蓑島選手の話を聞いていて、フィリピンで出会ったとあるボクサーの言葉を思い出しました。

最後なんて気がつかないうちに迎えているのかも知れない。いまが最後、そう思って生きていかなければ。いまを大事に噛みしめながら。

これからも蓑島選手の言葉を追っていきたいと思います。

最後まで拝読いただき、ありがとうございました

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ドイツのシュトラウビングアリーナからインゴルシュタッドのホテルに戻る際、

バスの車内から撮影したドナウ川

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長堀 笙乃

長堀 笙乃

元体育会明治大学スポーツ新聞部のアイスホッケー部担当。スポーツ報道をしたい。そのためにスポーツが強く、新聞部のある大学を選んだ生粋のスポーツ記者。この春大学を卒業し、現在は新人記者として修行中。休日はアイスホッケーの取材に走り回っている。