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【特集】新人監督のいま―第1弾・法政大学松田圭介監督―

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1970年代に7度の3冠を達成するなど、かつて大学アイスホッケー界の中心的存在であった法政大学。だが、2006年の関東大学選手権を最後にチームはタイトルから遠ざかっている。リーグ戦は2001年以降優勝を逃し、近年は5番目の座に甘んじているのが現状だ。
そんな法政の建て直しを図るべく、今季からOBの松田圭介氏が監督に就任した。大学時代は主力DFとして活躍し、平成15年度にはキャプテンを務めた。卒業後に進んだ日本リーグでも新人賞を獲得するなど、輝かしい実績の持ち主でもある。かねてから松田幹郎前監督らの強い要望もあり、昨季途中DFコーチに招へいされると、松田前監督の退任に伴って監督へ就任した。 
「指導者になるとは思っていなかった」と語る松田監督。法政大学を再び「勝てる」チームへ。常勝時代の法政を知る34歳の若き指揮官は、今のチームに何を思うのか。

(取材日:2015年11月8日 取材・編集:Yu Kumagai)


掲げるのは「守りを意識したプレー」

―監督に就任されてから、どのようなことに取り組んでいますか
昨年、コーチとしてチームに入ったときに、このチームを自分たちが強かった時代に戻すにはどうしようか、というところから始まりました。ちょっとやそっとでは変えられないかもしれない。厳しくしたら厳しくしたでついてはこられるけれど、時にはメリハリをつけないといけないところもあります。コーチに就任してそのあたりから始めました。今年に入って監督という立場になって掲げるのは、守りを意識としたプレー。分厚い攻撃力は元々持っているので、それよりも先に守る意識とホッケーに対する考え方。そういったところを変えていこうと思っていました。チームとして戦うということに関しては、少し変わってきたと思いますが、勝っていないのでなんとも言えないですね(苦笑)。

―守りからというのはご自身がDF出身であること、そして長年法政の課題が守りと言われていることもあってでしょうか
何の競技でもそうだと思いますが、守ってチームが勝つ。毎試合、3点は入れているんですよね。なので、3点入れて、2点以内の失点。これが大事になってくるかと思います。

―具体的に変えていこうとしている部分は
ホッケーの質ですね。プレーチョイスで、どういったものをしてはいけないのか。(2次リーグの)早稲田戦にしても東洋戦にしても、勝てる試合を相手に与えてしまっています。あと、リーグ戦で勝てない理由としては生活面かなと。食事だったり、そういったところから意識を高めていかないといけないですね。

―今年度から新たなコーチ(川村克俊コーチ)が加わりました
川村さんが世界選手権の監督をされていたとき、僕はそのチームで選手でした。同じホッケー論だったので、コーチとして一緒にやってくださいとお願いしたら、法政OBというのもあって「やるか」となってくださいました。

―コーチから監督へと立場が変わって、選手への接し方に変化はありましたか
昨年コーチになったのが、トップチームの指導者になる初めての経験でした。その時に思ったのは、まずは選手とよく話すことかな、と。もちろん、DFコーチとしてDF力を上げて、同時にチーム力も上げていかないといけない。ただホッケーだけを考えていればいいのかなと思っていました。年齢が選手と一回りくらいしか変わらないので、兄貴分のような感じに見ているのか、もしくは違うかもしれませんが、そういう部分で選手にとって話しやすいのはあると思います。それは今も同じですね。でも、監督になったら良い悪いを言ってあげなければいけませんし、全てチームの方向は監督で決まると思います。もちろんフランクに話す時やふざけるというメリハリは自分ではつけているつもりなんですが、怒るところは怒らないといけないですし、ハッパをかけるときはハッパをかけないといけない。そのような意味で、責任のある役割だと感じています。

 

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松田圭介監督(手前)

 

今は“試練の時”

―今シーズンここまでを振り返って
チームとしては悪くはないと思います。ミスも多いですが、最後まで諦めないというのがすごく出ていますし、前までだったら(差がつくと)ゲームを捨てていたと思います。そういうのがなくなってきていますね。ウチはそういったところから直していかないといけないところから始まりました。負けている原因は守ることが欠けているからだと思います。1対1、ターンオーバー、バックチェック。こういった失点につながるようなプレーをしてしまっていると、非常に厳しいかなとは思います。

―接戦を落とし、黒星が先行しています
点数を入れたあとに取られる、絶対に入れられてはいけない時間帯で入れられるというパターンが非常に多いです。これは普段の甘さですね。自分たちでは意識しているが、身体では出てしまう。生活のコンディションを変えないかぎり、難しいかなと。ホッケーだけで何とかするというのではなく、考え方。そのあたりをもう少し意識しないといけないと思います。ここまで、楽なゲームは(1次リーグ第5節の)日大戦だけです(8―0で快勝)。あとは全部接戦です。リーグ戦でこんなことはめったにないと思います(苦笑)。東洋とかは楽に下位のチームとやって、上位校と本番として臨むというのをやっていますが、ウチはそうはいかないですね。日大戦以降、勝ちがありません。勝てないというのは、今が我々の試練の時なのかなと。その試練に負けて、適当にやるのであればずっと試練は終わらないですね。

―今のチームに必要なものは
「オレがオレが」というところを、もう少し出してもいいかなと思います。それを出してもチームになったら、このチームは相当強いと思います。理想ですね。出てきてほしいのはDF陣の川上・畑中(共に2年生)、今・髙橋(共に3年生)。FWで言ったら一つ目以外の人間たちですね。もっと奮起してもらいたいなと思っています。

―2次リーグからエースの木戸選手が復帰し、攻撃に厚みが増しています
彼を入れたことによって、攻撃に分厚さができて平均3、4点取れています。(前半は)チーム事情で色々ありましたが、彼は誰よりもチームのことを考えているのかなと。攻めているときも一生懸命ですけど、守るときの一生懸命さ。バックチェックは最初に帰ってきています。だからこそ、もっと守ってもらいたいなという期待があります。彼のスタミナは脅威だと思いますね。

―1年生FWの活躍も目立ちます
沼田は急成長しました。走れる選手、スピードがある選手がチームとしてほしかったので。見ていて気持ちが良いですよね。鈴木も今日(11月8日中大戦)で、本当に良い場面で初ゴールを決めてくれました。

 

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試合中、ベンチで声を出す場面がよく見られる

 

しっかりとしたチーム」に

―インカレは東洋・中央と同じ山だと伺いました。その2チームに勝つホッケーを今は意識されていると思いますが
そうですね。この秋のリーグ戦はインカレに向けてすごく大事です。東洋はかつてホッケーのチャンピオンチームでもありましたし、スタッフ陣も先輩後輩になるので、絶対に負けたくないです。でも普段は、選手の時もそうでしたけどお互いに話をしたりしていますし、お互いに大学リーグを良くしていかないと、という思いでやっています。東洋で鈴木さんが先に監督になって、まさか次に僕がなるとは思っていませんでしたが(笑)。

―その東洋大・鈴木監督から、監督に就任するに際してかけられた言葉はありますか
しっかりやれ、法政を何とかしろという感じのことを言われましたね(笑)。選手のときもずっとお世話になった人でしたし、同じチームだったときのキャプテンでしたし。僕がコーチとして法政に来た時も「ちゃんと建て直せよ」と言われました。良いやりとりをお互いにさせてもらっています。

―上位との差を詰めるためには何が必要でしょうか
上位は近年まれに見る僅差だと思います。ウチが勝てない理由として挙がっているものは明確です。それに追い付くにはどうしたらよいかというところになりますね。中大は今日(11月8日)、6得点というのはありましたが、2ピリの途中まで分からない展開になっていました。ただ、そういうところから勝ちきれるチームというのはやはり「勝っている」チームです。僕が現役の時は「トップ4」にいつも法政がいました。現状、法政はこういう状況になっているので、何とかそれを変えるには意識改革。それと「ファイティングスピリット」という言い方が適切でしょうか。熱い選手。絶対負けないんだという気持ち。選手にハッパをかけたいなと思っています。

―目指すチームは
しっかりとしたチーム。それは全てにおいてです。動作、行動、そのしぐさ、人間。それがまずしっかりなくて、アイスホッケーができるわけがないと思っています。そこの部分をまずしっかりやってもらいたいなと。この大学生活の次は、今度は自分で責任を負う人生になりますので。プロ野球の野村監督が「野球選手である前に一人の社会人としてどうなのか」ということを良く選手に言っていたと言われますが、僕も今まさに同じことを言っていますね。一人の大学生としてどうなのか、一人の体育会の人間としてどうなのか、それが社会に通用するのか。そのあたりを分からせないといけないというのが、僕の仕事かなと。そうすればホッケーも絶対にうまくなる。僕はそう思っています。

 

☆取材後記☆
 法政の試合を観戦したことがある方なら、リンクに響き渡るトーンの高い声を耳にしたことがあるかもしれません。試合中も、ベンチから指示やチームを鼓舞する声を率先して出しているのが松田監督です。練習を見学させていただいた際、選手一人ひとりに指導する姿が印象的でした。選手と年齢も近い分、コミュニケーションも図っている様子が見て取れます。
 現部長の長峰氏は、監督の現役時代も部長を務めておられ、共に「法政を強くしたい」という思いで臨んでいるそう。自身も所属していた日ア連のトレーナーも呼ぶなど、新しい風を吹き込もうとしています。
 勝利という形では表れていませんが、今季の法政の戦いは決して悪くありません。プレーに集中力が増したのは見て取れます。大学ホッケーをさらに面白くするには“古豪”の復活が不可欠。スポーツ法政新聞会出身の人間としても、「強い」法政の復活を待ち望んでいます。(法政大学・熊谷優)

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